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現在の法律では、資本金1円で会社を作ることが可能です。少額の資金で会社設立ができることは、これから起業をしたい人にとってメリットでしょう。しかしデメリットや資本金以外に必要な費用を認識しておかなければ、会社の運営が行き詰まってしまう可能性もあります。
この記事では、1円株式会社の作り方と資本金以外に必要となる費用、1円株式会社のメリット・デメリットを解説します。資本金1円で株式会社を作ろうと考えている人は、ぜひ参考にして下さい。
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目次
現在の法律では、資本金1円でも株式会社を設立できます。
旧制度では株式会社の最低資本金は1,000万円でした。特例で資本金1円でも会社を設立できましたが、5年以内に最低資本金の金額まで増やすことが条件でした。5年以内に増資できなかった場合は、会社を解散しなければならず、会社設立時のハードルとなっていました。
2006年に新しく会社法が成立し、最低資本金の制度が撤廃されました。そのため現在は資本金が1円でも株式会社の設立が可能です。
ただし、設立時にかかる印鑑や税理士や司法書士への依頼費用、定款の費用なども資本金から支払うこともできますので初期にかかる30万円程度を資本金にされる場合もございます。
参考:産業政策から見た新会社法のポイント|経済産業省経済産業政策局
資本金とは事業を営むための元手のことです。株式会社の場合は、経営者の自己資金や出資者から募った資金が資本金となります。
上場企業でない限り、創業時に第三者から出資を受けることは難しく、経営者の自己資金から資本金を用意するのが一般的です。なお返済義務のある借入金は、資本金に入れられません。
資本金をいくらにすべきか判断に迷う場合は、こちらの記事を参考にしてみてください。
資本金が1円の株式会社も通常の会社と同様の手順で設立できます。設立までの流れは下記のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
会社を設立するには、会社の基本事項を決める必要があります。決定すべき主な項目は、下記のとおりです。
会社名は漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字など、決められた文字のみ使用可能です。会社名の前後いずれかに、必ず「株式会社」という法人格を入れます。
設立する会社の所在地に同じ会社名がある場合は登記できないため、注意して下さい。特定の企業や団体を連想させないように気を配ることも必要です。
役員は会社の運営を担う人のことで、取締役や代表取締役、監査役にあたります。取締役が1人いれば会社の設立は可能です。自分だけで起業する場合は、自分自身を取締役にします。
会社を設立するうえで必要になるのが実印です。一般的に登記手続きの際は、実印と印鑑届書を提出します。印鑑届書は実印を登録するための書類で、提出すると印鑑証明書を取得できます。
法改正により2021年2月以降、オンラインで登記申請をおこなう場合は提出が任意になりました。しかし実印が不要になったわけではありません。法人名義で銀行口座を開設したり融資を申し込んだりする際は、印鑑証明書が必要です。
なお事業をおこなううえで必要な印鑑は、実印だけではありません。銀行口座を開設するときは銀行印、請求書や領収書に押印するときは角印を使用します。実印と合わせて、銀行印と角印も作成しておくのがおすすめです。
定款とは会社を運営する際のルールをまとめたものです。会社設立手続きの中で、時間がかかりやすいため、余裕を持って対応しましょう。定款に決まった書式はなく、紙または電子定款のいずれかで作成します。
定款には法律上、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」が定められています。絶対的記載事項を満たしていないと、定款は無効になってしまうため注意して下さい。具体的には下記の項目を記載する必要があります。
1円株式会社を設立する場合「設立に際して出資される財産の価額または最低額」は1円と記載します。
法務局で登記手続きをおこなう際は定款の提出が必要ですが、公証役場で認証を受けたものでなければなりません。定款の認証は、本店所在地管轄の公証役場に依頼します。
参考:会社法|法務省
定款の認証を受けたら、資本金を払い込みます。この時点では登記が完了しておらず会社の銀行口座が存在しません。そのため、発起人の個人口座に資本金を振り込みます。
1円株式会社の場合、資本金としてきっちり1円を振り込む必要があると考えるかもしれません。しかし資本金と合わせて、事業の必要資金を入金できます。1円のみを振り込むことは手数料や労力の面からも非効率といえます。1円株式会社であっても、事業資金を含めた金額を振り込むのがおすすめです。
会社設立の登記手続きは、本店所在地管轄の法務局でおこないます。登記に必要な書類は、一般的に下記のとおりです。
必要書類は会社の形態によって異なるため、法務局の担当者や司法書士などの専門家に確認して下さい。申請後、書類に不備がなければ10日ほどで登記が完了します。
株式会社を作る際は、資本金のほかに20〜30万円ほどの費用がかかります。主に必要な費用は下記のとおりです。
費用の種類 | 費用の種類 |
登録免許税 | 15万円~ |
定款の認証にかかる費用 | 5万円(謄本代として別途2,000円ほど必要) |
定款の収入印紙代 | 4万円(電子定款の場合は不要) |
印鑑の作成費用 | 実印、銀行印、角印のセットで2~3万円 |
登録免許税は「資本金の金額×0.7%」で計算しますが、15万円に満たない場合は15万円となります。そのため資本金1円で株式会社を設立する際は、15万円の登録免許税が必要です。さらに登記手続きを司法書士に依頼する場合は、7〜10万円ほどの手数料がかかります。
資本金が1円であっても、ほかに費用がかかることを認識しておきましょう。
参考:
No.7190 登録免許税のあらまし|国税庁
定款認証の手数料|神戸公証センター
資本金1円で株式会社を作るメリットは、少ない資金で会社を設立できることです。それ以外にも下記のようなメリットがあります。
資本金が1円の株式会社に限りませんが、会社設立時の資本金が少ないと一定期間、消費税の納付が免除されます。
そもそも消費税の納付義務は、前々年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者は免除される決まりです。しかし、設立したばかりの会社は基準期間が存在しないため、下記の条件で消費税の納付義務が判断されます。
事業年度 | 消費税が免除される条件 |
1期目 | 会社設立時の資本金が1,000万円未満 |
2期目 | 資本金が1,000万円未満で、以下のいずれかに該当する場合 ・会社設立から6ヶ月間の課税売上が1,000万円以下 ・会社設立から6ヶ月間の給与支払額が1,000万円以下 |
資本金が1,000万円以下の法人は、少なくとも1期目は消費税が免除されることになります。
参考:
No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁
No.6501 納税義務の免除|国税庁
法人を設立する場合、会社名や本店所在地、資本金などの情報を登記しなければなりません。登記内容は誰でも閲覧できるため、個人事業主と比べて信用を得やすくなります。
また取引先によっては、法人でないと取引をおこなわないケースも少なくありません。法人との取引が中心になる場合は、資本金が1円であっても法人を設立するほうがよいでしょう。
会社設立には資本金が必要ですが、通常は創業者の自己資金から払い込むことになります。会社設立後は原則、資本金を自由に引き出せないので、資本金を多くすると、創業者の生活を圧迫する可能性があります。
資本金ではなく貸付金として会社に資金を入れると、必要に応じて創業者は会社から返金を受けることが可能です。資本金が1円の場合は、足りない資金を創業者からの貸付とすればリスクを分散できます。
会社を設立すると法人税、法人住民税、法人事業税などの税金がかかります。資本金の金額が影響する主な税金は、法人住民税と法人事業税です。
法人住民税は均等割と法人税割の2つの税割で構成されます。法人税割は課税所得が高い会社ほど税額が高くなる仕組みです。一方で均等割は、資本金や従業者数などで税金が課されます。資本金の額が少ないほど、均等割の金額も少なくなるのです。
資本割は法人事業税を構成する要素のひとつですが、資本金の額に応じて税額が決まります。資本金の額が少なければ、税金を抑えることが可能です。
資本金が1円の会社は均等割や資本割の税金が低くなるため、納税額を抑えられます。
資本金1円の株式会社には、社会的信用が得られない、融資を受けにくいなどのマイナス面があります。資本金1円で株式会社を作るデメリットを列挙すると下記のとおりです。
資本金が1円などの少額である場合、銀行口座が開設できないことがあります。少額の資本金で設立された法人の銀行口座はマネーロンダリングや詐欺に利用されるリスクがあり、金融機関は慎重に審査するためです。
法人口座がなくても会社は運営できますが、資金の流れを把握しにくいなどの欠点があります。口座開設に影響するため、極端に少ない資本金での会社設立は避けるべきです。
資本金は会社が事業をおこなうための元手であり、事業の安定性を計る目安のひとつです。そのため、資本金が多いほど取引先からの信用が高まります。反対に資本金が少ないと、取引先を不安にすることも少なくありません。
資本金はホームページなどに掲載していなくても、登記情報から簡単に把握できます。取引先からの信用に影響することを認識したうえで、資本金の金額を決めるべきです。
金融機関は融資にあたって資本金などの情報をもとに、返済に問題がないかを判断します。資本金1円では債権を回収できる可能性が低いとみなされ、融資を受けにくくなります。金融機関以外から資金を借りて事業を営むことも可能ですが、借入金が多い状態はよい印象を与えません。
新規事業者向けの融資もありますが、一定の自己資金額が条件となっています。金融機関から融資を受けたい場合は、少額の資本金は避けるべきです。
業種によっては許認可を必要とする場合があります。特定の業種では、一定の資本金がないと許認可が下りないケースもあります。
例えば、特定建設業では資本金2,000万円以上かつ自己資金4,000万円以上が必要です。この条件は、大規模な工事を請け負う資金力がある業者のみを選ぶために、設定されています。これから運営する事業に許認可が必要か、必要な場合の資本金はいくらかを確認しておきましょう。
資本金が1円の会社は経営を不安視され、従業員の採用が難しい可能性があります。資本金が1円だと、給料や労働時間などの待遇が悪いに違いない、福利厚生が期待できないなど、マイナスの印象を与えるためです。
従業員を採用して事業を拡大したいと考えるのであれば、資本金1円での会社設立はおすすめしません。
資本金が1円でも株式会社の設立は可能です。資本金が1円である点を除いて、通常の会社設立と同じ流れで作れます。設立には資本金のほかに、登記費用など20〜30万円の費用がかかるのも同じです。
資本金が1円であっても、株式会社化することで信用力が増すなどのメリットがあります。一方で口座開設や融資に悪影響を及ぼすなどのデメリットもあるため、資本金の金額をよく検討するべきです。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。
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