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2023年10月から、消費税の仕入税額控除を受けるための新たな要件をまとめた「インボイス制度」が開始されます。インボイス制度に対応し、電子データでやりとりする仕組みが「電子インボイス」です。
インボイス制度に対応した請求書が発行できる事業者や、電子インボイスの対応は、2023年9月現在、任意です。しかし、電子インボイス推進協議会により標準仕様を「Peppol(ペポル)」にする旨が取り決められるなど、国をあげて電子化を推進しているため、今後は電子化の流れが一層強まると推測されます。
そこで今回は、電子インボイスのメリットとデメリットを解説します。加えて、電子インボイスの義務化と電子帳簿保存法についても理解できる内容です。
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目次
電子インボイスとは、2023年10月から開始されるインボイス制度に対応した適格請求書を電子データでやりとりする仕組みのことです。インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受けるための新たな要件をまとめた制度を指します。
インボイス制度の詳細は、関連コラムをご参照ください。
電子データをやりとりする仕組みは、以下のような取引です。
電子インボイスの取扱いは、電子帳簿保存法に則る必要があります。
電子インボイスを推進する最大の目的は、業務を効率化し、生産性の向上を実現するためです。
昨今、バックオフィス業務のDX化が叫ばれるなか、請求書や支払いに関する処理は、紙を使って手間のかかる作業をしている企業も多いのではないでしょうか。
そこで、電子インボイス制度を導入し、業務プロセス全体を見直せば、業務効率化や生産性向上が見込めます。業務が効率化できれば、ミスを防止できるだけでなく、管理している資産の可視化も可能です。ひいては、取引区分の判定や、複数の税率に対応する必要がある消費税の計算が容易にできるようになるでしょう。
インボイスの発行ができる適格請求書発行事業者になるか否かは、任意です。
売上の少ない事業者や、インボイスの対象とならない取引がメインの事業を営む場合など、適格請求書発行事業者にならない事業者もいるでしょう。
電子インボイスにおいても、2023年9月現在は義務化されていません。しかし電子インボイスの推進は消費税の仕入税額控除とは関係なく、業務効率化などを目的として政府が推進している事業です。
インボイス制度の導入により発行する請求書は、項目に決まりがあるものの、フォーマットや交付方法に明確な規定がありません。企業ごとに違う形式でやりとりしていると、煩雑で作業の効率化は難しいでしょう。
そこで、デジタル庁と民間の会計ソフトウェアベンダーを中心とした電子インボイス推進協議会(EIPA)により、日本における電子インボイスの標準仕様は「Peppol(ペポル)」とすることが取り決められました。
「Peppol」は、受発注や請求書などのデータをネットワーク上でやりとりするための仕組みです。文書仕様、ネットワークおよび運用ルールが標準化されています。現在、世界30ヶ国以上で採用されている規格です。
インボイス制度に則った請求書であればPeppolに即す必要はありません。しかし、Peppolを導入しておけば、国内だけでなく海外企業とのやりとりもスムーズになるでしょう。
電子インボイスのメリットは、主に6点です。
詳しく解説します。
請求書や支払い作業を紙で行っている場合、振り込み登録作業や、会計システムなど手入力が必要です。一つずつ手入力をするのは、手間と時間がかかります。さらに、現在の消費税は、複数の税率が混在している状況です。
会計仕訳のときに消費税を分けて表記するため、作業の手間と時間がかかります。電子インボイスを導入すれば、請求書の情報を自動で会計システムへ取り込めます。大幅な作業時間の短縮が見込まれる点は大きなメリットです。
紙を使った請求書の発行作業は、請求書を作成し、送付していました。請求書を作成するときの金額入力や、送付先の住所など、間違いやすいポイントが多数あったでしょう。手間がかかるうえに、人為的ミスが発生しやすい作業でした。
しかし、電子インボイスの導入後は、請求書の情報を連携させるデータへ変換できます。手入力の必要がないため、人為的ミス対策として効果的です。人為的ミスの少ない作業は、後任へ引継ぎやすいため、作業の属人化防止にも貢献できます。
今までの請求書発行作業は、請求額や取引先を手入力していました。悪質な場合は、データ改ざんができてしまいます。加えて、紙を何枚も出力し、請求書を悪用するケースも起こりかねません。
電子インボイスを採用すれば、取引額の修正は困難です。電子データの改ざんには、さまざまな対策がとられています。
たとえば、電子帳簿保存法に基づく電子署名や、ファイルのアクセスログを残すなどです。セキュリティ対策をとることで、電子インボイスを作成すれば、データ改ざんが防げるでしょう。
2023年10月からのインボイス制度が開始されたあとは、請求書を発行した側、受け取った側どちらにおいても、適格請求書の控えを7年間保管しなければなりません。そこで、電子インボイスを導入すれば、専用システムや、クラウド環境で適格請求書の控えを保存します。
紙をファイリングする手間やファイルや用紙などの備品を購入するコスト、保管スペースがかかりません。コストカットに加えて、整理しやすい点もメリットです。
適格請求書のやりとりをスムーズにするために、日本における電子インボイスの標準仕様はPeppolとすることが取り決められました。Peppolは、既に世界30ヶ国以上で採用実績があります。
電子インボイスにPeppolを使えば、請求書や支払いのやりとり方法は、国内企業と同じ方法です。新たに覚える必要がなく、海外企業とスムーズに取引できるのは、海外企業と取引のある企業にとって、大きなメリットといえるでしょう。
電子インボイスの標準規格であるPeppolでやりとりすると、さまざまな取引がネットワーク上で対応できます。今までおこなっていた紙運用の状態でテレワークをする場合、出社して請求書をスキャンし、共有フォルダなどへの保存が必要でした。
さらに、スキャンした情報を会計システムなどへ手入力し、補足情報を追記するなど、多くの手間をかけて1つの処理を実行します。電子インボイスを導入すれば、紙のスキャン作業や補足情報の入力が不要です。作業担当者は、自分の作業状況を気にせずテレワークができます。
電子インボイスには、多くのメリットがある一方、デメリットもあります。
デメリットを理解したうえで、上手に電子インボイスを活用しましょう。
電子インボイスをはじめて導入する企業の場合は、取扱いルールを作成しなければなりません。取り扱うルールは、以下のような場合です。
統一ルールとあわせて、作業担当者が判断に迷うことのないよう、個別事例もルール化しておかなければなりません。全社統一のルール作成は、従業員への周知まで含めると、浸透するまでにかなりの期間が必要です。
今までの作業を続けていれば、ルールを作成する必要がないため、デメリットに感じる場合もあるでしょう。
適格請求書発行事業者は、電子インボイスを発行する義務はありません。取引先によっては、紙の請求書しか受け付けない恐れがあります。電子インボイスを導入している企業が紙の請求書を発行するときは、電子データの作成と、紙による作業の両方が必要です。
もし紙の請求書でやりとりを希望する取引先が多い場合は、電子と紙の作業が必要なため、電子インボイスのメリットが得られない恐れがあります。電子インボイスの導入を希望する場合は、取引先の状況を確認し、承諾を得てから導入すると、メリットを得やすいでしょう。
受け取った電子インボイスは、2つの保存方法があります。
どちらの場合においても、電子帳簿保存法の要件を満たした保存が義務付けられています。電子帳簿保存法では、電子データとして受け取った請求書は、電子データのまま保存しなければなりません。
しかし現在は、猶予期間として2つの保存方法を設けているだけで、将来的に紙の保存は廃止される方向です。今から少しずつ、電子インボイスの準備をしておきましょう。
電子帳簿保存法とは、税務関係の書類や帳簿類を電子化するためのルールを定めた法律です。電子帳簿保存法に基づいたシステムを導入すれば、経理作業の効率化が期待できます。主に3つの区分に分けて保存方法を定めています。
電子帳簿保存法に定められた電子データの要件は、以下です。
原則、電子データとして保存すべき取引情報は、電子データとして保存が必要です。しかし2023年末までは、紙に出力して保管するのは差し支えありません。2024年以降に向けて、電子データの保存環境とルールづくりを進めておきましょう。
電子インボイスのメリットとデメリット、電子帳簿保存法について解説しました。電子インボイスとは、2023年10月から開始されるインボイス制度に対応した適格請求書を電子データでやりとりする仕組みのことです。
原則、電子データで受け取った請求書は、電子帳簿保存法に基づき、電子データのまま保存しなければなりません。しかし、現在は猶予期間のため、紙での出力が可能です。電子インボイスの導入には、システムの導入だけでなく、ルールづくりまで短期間でおこなう必要があります。
インボイス制度の対応だけでなく、電子インボイスの導入も検討しているが、事業に専念するため事務的な手続きはプロに任せたいという方は、税理士への相談をおすすめします。千代田税理士法人では、電子インボイスの導入に向けたサポートをしています。初回無料相談を実施しているので、一度お気軽にご相談ください。