竹橋駅5分/神保町駅10分
近年では、起業家やフリーランスが会社を立ち上げるケースが多く見られるようになってきました。働き方が多様になってきたことにともない、大きな組織に属さず、比較的設立しやすく機動力のある会社をつくろうという動きが活発になってきたためです。
少ない資金で比較的手軽に会社を設立する際の選択肢として、合同会社というものがあります。しかし名前は聞いたことがあっても、自分1人で設立できるかなど、詳細については知らない方が多いのではないでしょうか。
この記事では合同会社の設立をテーマとし、自分1人で設立できるか、どのような手順で設立すればよいか、設立後にするべきこととしてどのようなことが挙げられるか、といった点を解説します。
会社設立案内BOOKを無料提供しております。ダウンロードはこちらから!
目次
合同会社とは、2006年に施行された会社法によって生まれた新しい会社形態の1つです。多くの方が会社と言って真っ先に思い浮かべる株式会社についで、2番目に多い設立数を誇っています。
世界の大企業が日本法人を設立するときに、合同会社を選択肢とするケースは珍しくありません。代表例としては、GoogleやAmazonが挙げられるでしょう。どちらも日本法人は合同会社となっています。
合同会社のモデルとなったのは、アメリカのLLC(Limited Liability Company)。そのため日本版LLCとも呼ばれています。
合同会社においては出資者がそのまま会社の経営者となるため、株式会社における「所有と経営の分離」がありません。会社の持ち主と会社の運営者が一致しているので、迅速な意思決定が可能な点がメリットです。
自分1人でも設立できます。そのためフリーランスとして働いている方が、節税などを目的にして合同会社を設立するケースも比較的よく見られます。
株式会社と比較すると知名度は低く、まだまだ普及していない企業形態ではありますが、中小企業の経営者が自社のビジネスを展開するうえで有力な選択肢の1つともなっています。
合同会社を設立するメリットとしては、以下の5つが挙げられます。
株式会社と比較したとき、これらは合同会社を選択する強い根拠となります。以下の解説をしっかり読んで把握しておきましょう。
合同会社の大きなメリットとして、株式会社より設立費用を抑えられることが挙げられます。
会社を設立する際には、法務局で登記をしなければいけません。その際に納める登録免許税は、株式会社で15万円程度かかるのに対し、合同会社は6万円程度に収まります。
また株式会社は公証役場で定款の認証を受ける必要があり、3〜5万円程度の費用がかかりますが、合同会社は定款の認証は必要ありません。そのため認証費用が一切かかりません。
つまり株式会社を設立したければ最低でも18万円程度かかるところ、合同会社の場合は6万円程度で済むことになります。少しでも出費を抑えたい起業時において、10万円以上の差は大きいといえるでしょう。
合同会社も株式会社と同様、設立の際には定款を作ることが義務付けられています。定款とは会社の基本ルールをまとめたものであり、会社における憲法のようなものです。
前項で解説した通り、株式会社の場合は公証役場で定款の認証を受ける必要があります。しかし合同会社を設立する際にはその必要がありません。これは費用を抑えられるだけでなく、定款認証というプロセスを省けるぶん設立にかかる時間が短くなる点でもメリットといえます。
合同会社は、最短3日ほどあれば設立できます。このスピード感は株式会社にないものであり、少しでも早くスタートを切りたい方にとっては大きな武器となるでしょう。
合同会社の大きなメリットとして、会社経営の自由度が高いことも忘れてはいけません。
株式会社の場合、会社の持ち主は経営陣ではなく株主です。会社の方針や重要事項を決定するためには株主総会を開催し、議決を取る必要があります。いわゆる「所有と経営の分離」です。
しかし合同会社は、出資者がそのまま経営に携わる形態であり、所有者と経営者が分離していません。そのため株主総会などを開くことなくスピーディーな意思決定が可能となり、結果として自由な経営が可能となります。
合同会社には、決算公告の義務がありません。
決算公告は、会社の成績や財務の状況などを、出資者である株主や債権者などに対して明らかにするためのものです。官報に掲載するのが一般的で、その際には7万円ほどの費用がかかります。電子公告で済ませた場合であっても1万円程度は必要になります。
合同会社の場合は決算公告の義務がないため、上記の掲載費がかかりません。会社というスケールで考えればわずかな金額かもしれませんが、少しでもコストを抑えたい企業にとってはメリットであるといえるでしょう。
合同会社の役員には、任期という概念がありません。基本的に無制限であり、本人が続けたいと思えば、会社が存続する限り役員を続けられます。
株式会社の場合は、役員の任期が通常2年と定められているため、任期終了のたびに重任登記などが必要となり、登録免許税が発生します。合同会社においては、これらの出費が必要ありません。
ただし合同会社でも、定款で役員の任期を定め、一定期間ごとに役員を入れ替える経営も可能です。
合同会社を設立するデメリットとしては、主に以下の3つが挙げられます。
いずれも見逃せない要素であり、設立する前にきちんと把握しておく必要があります。以下の解説をしっかりと頭にいれておきましょう。
合同会社は株式会社と比べると、信用度が低い傾向にあります。2006年に会社法によって新たに設けられた形態であり、一般になじみが薄いのが大きな理由です。
もちろん合同会社も法的に定められた立派な会社であり、本来であれば株式会社と遜色のない扱いを受けるべきではあります。しかし世間の認知度の点で劣ることは否めず、「株式会社としか契約しない」というスタッフの会社も多く見られるのが現実です。
また知名度の低さから、株式会社と比べて優れた人材が集まりにくい可能性も考えられます。
株式会社の場合は、新たに株式を発行することによる資金調達が可能です。しかし合同会社には株式の概念がないため、同じ方法を採ることができません。同様に、自社株を売却することによる資金調達なども不可能です。
合同会社の資金調達方法としては、国や自治体からの補助金や助成金などのほか、金融機関からの融資などがメインとなります。株式会社と比べて資金調達の方法は限定されてしまいます。
資金調達の方法について詳しく知りたいという方は、下記の記事も合わせてご覧ください。
合同会社は出資者がそのまま経営者であるため、経営に参加しているすべての人が平等に決定権を持っています。
所有と経営が分離している株式会社と比べて迅速な意思決定が可能である点はメリットですが、一方で出資者同士が対立したときに、経営や業務に支障をきたす可能性がデメリットとなります。
経営陣が同じビジョンを共有し、1つの目的に向かって力をあわせているうちは問題ありません。しかし意見の食い違いが起こるなどして収拾がつかなくなった場合には、経営自体がストップしてしまう危険性をはらんでいます。
合同会社の設立手続きは株式会社よりも簡単なので、時間さえあれば自分の手でおこなうことも可能です。
合同会社の人気が高まっている理由の1つとして、定款認証が不要であることなど設立までのプロセスがシンプルなことが挙げられます。
株式会社を設立する場合、作成した定款は公証役場で認証してもらう必要がありますし、設立登記の際の添付書面も多数あります。会社設立の知識がないと、その複雑さのため本来力を入れるべき事業の準備に支障をきたしかねません。
一方で合同会社を設立する場合には、定款の認証が必要なく、登記の際の添付書面も株式会社に比べて少ないので、スピーディーかつ比較的手間をかけずに手続きを進められます。
しかしもちろん、合同会社の登記であっても「きちんとできるか不安」という方はいるでしょう。自分1人で設立するのが不安な場合には、税理士や司法書士などのプロを頼るのが賢明です。
合同会社の設立手続きの大まかな流れは以下になります。
一連の流れをおおまかに把握しておくだけでも、実際に設立する際にスムーズに動けるようになります。以下の解説を読んで、イメージを作っておきましょう。
また法務省の公式サイトには、合同会社の具体的な設立手続きが掲載されています。詳細を知りたい方はそちらもチェックしておきましょう。
参考:法務省「合同会社の設立手続について」
まずは会社の基本事項を決める必要があります。必ず定めなければならないのは、以下の6つの項目です。
ほかにも任意で定める項目はたくさんありますが、必須となるのは上記の6項目です。会社の根幹となる情報ばかりなので、後々問題が起きないようしっかり定めておきましょう。
会社の基本情報を決めたら、それに基づいて定款を作成します。すでに述べたように、定款とは会社の基本ルールをまとめたものであり、会社における憲法のようなものです。
株式会社と比べると、合同会社の定款はあまり複雑ではありません。たとえば株主構成や機関設計、株式の譲渡制限といった要素はないので、比較的簡単に作成できます。
定款に記載する内容としては、前項で解説した6項目のほかに以下のようなものがあります。
上記項目を定款としてまとめ、これから設立する合同会社における絶対的なルールブックとして扱います。
定款については、下記の記事でも紹介しております。合わせてご覧ください。
設立登記をおこなう前に、出資金を払い込みます。設立登記をおこなう際には、出資金がたしかに払い込まれたことを証明する払込証明書を添付しなければいけないからです。
払込証明書は銀行など金融機関が発行するのではなく、自分で作成する点に注意してください。A4の紙に払込証明書と明記し、「当会社の設立により発行する株式につき、次のとおり発行価額全額の払込みがあったことを証明します」のように記載します。
払込証明書の内容としては、資本金の総額・日付・商号・代表者印の名前などが必要です。また代表社員の押印も求められます。
出資金の払込先は、社員のうち誰かの個人的な口座で問題ありません。この時点ではまだ合同会社は存在していないため、会社名義の口座はあり得ないからです。
資本金をいくらにすべきか悩んでいる方は、下記の記事も合わせてご覧ください。
出資金の払込みが終わったら、いよいよ設立登記の申請をします。登記のフォーマットは法律で細かく定められており、必要事項の記載漏れやミスなどは一切許されません。そのため登記の専門家として司法書士が存在します。
登記書類の記載内容は、商号・本店・登記の事由・登記すべき事項・課税標準金額・登録免許税・添付書類・日付・申請人の詳細などです。
合同会社の場合、登録する際には登録免許税として6万円が必要です。6万円分の収入印紙を申請書に貼って提出することになります。収入印紙は法務局でも販売しているので、法務局で書類をチェックしてもらってから、提出する直前に購入し貼るのがおすすめです。
登記申請書を提出した日が、合同会社の設立日となります。
合同会社の設立にかかる費用は、最も少ない場合で6万円と考えておきましょう。具体的な内訳は次の通りです。
しかしもちろん、お金を払ってでもプロに任せた方が安心という考え方もあります。その場合には、設立したい合同会社の内容について税理士に相談したり、登記申請を司法書士に依頼したりといった出費を計算する必要があるでしょう。
合同会社の設立は株式会社に比べれば簡単ですが、それでも必要な書類は決して少なくありません。具体的には以下のような書類を用意する必要があります。
必要書類がどれか1つでも欠けると登記の申請が通らなくなってしまうので、必ずすべて揃えなければいけません。
無事に合同会社を設立しても、それで終わりではありません。設立後にやるべきこととして、以下の4つが挙げられます。
順番に見ていきましょう。
合同会社の設立が済んだら、本店所在地を管轄する税務署に対し、設立後2ヶ月以内に必要な書類を提出する義務があります。必要書類は以下の4点です。
このほかにも、資本金の額または出資額が1,000万円以上であった場合には、消費税関係の手続きもする必要があります。
地方税については、地方自治体に届出をする必要があります。対象となる地方自治体は、本店所在地がある都道府県・市区町村です。こちらも期限は設立後2ヶ月以内となっています。
届け出の際には、申請書類のほかに定款のコピーと登記事項証明書が必要になるので、忘れずに持っていきましょう。
社会保険に関して、年金事務所に届出をする必要もあります。法人は社会保険に加入しなければならない義務があり、社会保険には「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」の3種類があります。
必要書類は以下の通りです。
上記の書類は、会社設立後5日以内に提出しなければいけません。非常に期間が短いので注意してください。
ここまで解説してきた届け出のほかにも、たとえば労働保険の手続きをしなければならない場合もあります。自分1人で会社を設立した場合、最初のうちは従業員がいないので問題ありませんが、新たに雇う場合には労災保険と雇用保険に加入しなければいけません。
労災保険は労働基準監督署で、雇用保険はハローワークでそれぞれ手続きをおこないます。
合同会社の設立に関して、メリットやデメリット、具体的な設立の手順や必要書類などについて解説しました。
合同会社の設立は株式会社に比べれば簡単で、自分1人で会社を設立する際、自分だけですべての手続きを済ませることも不可能ではありません。
しかし会社を設立する際は、定款の作成や登記の手続き、銀行口座の開設などやらなければならないことがたくさんあるのも事実です。多くの手続きが必要であるにもかかわらず、チェックは厳密におこなわれるため、わずかな不備も許されません。
これから始める事業に注力したい方にとって、それらは負担に感じられることでしょう。
合同会社設立の事務手続きにおける不安なことはプロに任せて事業に集中したい方、そもそも合同会社と株式会社のどちらの形態で会社を設立するのがよいのか相談したい方などは、千代田区神田の税理士・千代田税理士法人にお問い合わせください。初回は無料で相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
合同会社は1人でも設立できます。自分だけで出資し、自分が代表社員となることで「一人会社」を作ることが可能です。
合同会社は、これまでフリーランスとして活動してきた方が、節税などのために設立する会社としても適しています。
合同会社はいつでも株式会社に組織変更できます。
組織変更の際には社員全員の同意書などが必要となりますが、費用はそれほどかかりません。登記が必要となるので、登録免許税を支払わなければならない程度に収まります。
組織変更することで、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性もありますが、これまで築いてきた信頼関係に問題が生じたり、経営方針を根本的に見直す必要があったりといった注意点もあります。
前提として合同会社でも法人口座の開設は可能です。そのうえで法人であっても、法人口座の開設を必ず
しなければいけないわけではありません。法人口座がなくても事業を続けることは十分に可能です。
しかし法人口座ならではのいくつかのメリットがあり、口座を持つことで事業を進めやすくなる場面が考えられま
す。弊社・千代田税理士法人はGMOあおぞらネット銀行とパートナー提携をしているため法人口座の紹介が
可能です。
※ただし、法人口座には審査がありますので予めご了承ください。