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取引先が倒産したことで、売掛金などが回収できなくなった場合、中小企業倒産防止共済法に基づき、共済金を借入れできる「経営セーフティ共済」という制度があります。経営セーフティ共済の掛金は、法人の場合は損金として、個人事業主の場合は経費として計上が可能です。
そこで、利益があがるときに加入すれば、高い節税効果が期待できます。40ヶ月以上掛金を払い込み、継続しておけば、全額返還される点も大きなメリットです。一方で、解約手当金や掛け捨てになる時期があるなど、デメリットもあります。
本記事は、経営セーフティ共済のメリットとデメリットを解説します。経営セーフティ共済の加入を検討する方向けには、加入方法と解約時の注意点まで理解できる内容です。ぜひ参考にしてください。
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目次
経営セーフティ共済とは、取引先が倒産し、売掛金などの回収ができなくなった場合に共済金を借入れできる制度です。中小企業倒産防止共済法に基づき、中小企業の連鎖倒産を防ぐために創設されました。具体的には、以下のような支援が受けられます。
被害額の算定 | ・売掛金と前渡金返還請求権のみ。 ・貸付金や融通手形、不動産賃貸料は対象外 ・倒産した取引先に買掛金などの債務がある場合は相殺 ・取引先が、1年以上取引のある主要取引先の場合は、一定額を加算 |
主な借入れ要件 | ・取引先の倒産が共済加入後6ヶ月以上経過していること ・共済金を6ヶ月以上納付していること ・取引先の倒産から6ヶ月以内 |
借入れ限度額 | ・被害額と共済金の10倍に相当する額の少ない額 ・原則、50万円から8,000万円で5万円単位 |
返済期間 | ・5,000万円未満の場合、5年 ・5,000万円以上6,500万円未満の場合、6年 ・6,500万円以上8,000万円以下の場合、7年 (いずれも6ヶ月間の措置期間を含む) |
返済方法 | ・6ヶ月の措置期間が経過したのち、均等分割による毎月返済 ・返済期日までに返済がない場合は、年14.6%の違約金が発生 ・分割する月数は、 5年間の場合は54ヶ月、6年間の場合は66ヶ月、7年間の場合は78ヶ月 |
利率 | 無利子。 ※借入れ後は、払い込み済みの共済金10分の1相当額を控除 |
担保・保証人 | 不要 |
なお、借入れには、より詳細な要件があります。具体的な要件は、事前に確認することをおすすめします。
参考:中小企業基盤整備機構「共済金について」
経営セーフティ共済は、継続して1年以上事業を営む中小企業が加入できます。中小企業の範囲は、会社または個人事業主、組合です。範囲ごとにさらなる加入要件があります。
会社または個人事業主の場合は、業種ごとに加入できる範囲が異なります。具体的には、以下のとおりです。
業種 | 資本金 出資総額 | 常時使用する従業員数 |
製造業、建設業、運輸業その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
ゴム製品製造業 (自動車または航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く。) | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
組合は、以下の6組織が経営セーフティ共済に加入できます。医療法人、農事組合法人、NPO法人、森林組合、農業協同組合または外国法人等は加入対象外です。
なお、経営セーフティ共済は、取引先の倒産などにより回収できなくなった売掛金等に対する貸付制度です。そのため、一般消費者を対象とする事業者は、売掛金等がないため、共済金の貸付けができない恐れがあります。加入の前に、取引先の再確認が必要です。
経営セーフティ共済の掛金は、月額5,000円から20万円まで5,000円単位で自由に設定できます。掛金の総額が800万円に達するまで積み立てが可能です。支払いは、毎月27日(27日が休日の場合は翌営業日)に預金口座から引き落としで払い込みます。
掛金は、前納や掛止め、増額や減額が可能です。前納の場合は1ヶ月分につき0.9/1,000の前納減額金が発生します。掛止めができるケースは、以下いずれかの場合です。
増額や減額を希望する場合は、希望月の5日までに中小機構が書類を受理すれば、当月から変更後の掛金で引き落とされます。締め切り日までに書類が受理されない場合においても、翌月以降に調整し、希望月から増額または減額が可能です。
経営セーフティ共済のメリットは、5点です。
本章では、経営セーフティ共済のメリットを詳しく解説します。
共済金は、6ヶ月以上掛金を払い込んでいれば、無担保・無保証人で借入れ可能です。取引先が倒産していなくても、事業資金が必要な場合に解約手当金の95%を限度として借入れができる一時貸付金制度があります。
一時貸付金の概要は以下のとおりです。
借入れ限度額 | 掛金納付月により変動 ・1ヶ月~11ヶ月=0円 ・12ヶ月~23ヶ月=掛金総額×75%×95% ・24ヶ月~29ヶ月=掛金総額×80%×95% ・30ヶ月~35ヶ月=掛金総額×85%×95% ・36ヶ月~39ヶ月=掛金総額×90%×95% ・40ヶ月以上=掛金総額×95%×95% ・掛金総額が800万円の場合=800万円×100%×95%(760万円) |
借入れ額 | 30万円以上5万円単位で設定 |
借入金の使途 | 運転や設備投資などの事業資金 |
返済期間と方法 | 1年後に一括償還 |
利率 | 金融情勢に応じて変動(2011年4月以降は年0.9%) |
担保・保証人 | 不要 |
担保や保証人が不要でまとまった資金が借入れできる点は、大きなメリットといえるでしょう。
取引先が倒産したら、売掛金等が回収できないため、連鎖倒産が発生するかもしれません。そのため、経営セーフティ共済では、取引先との取引および倒産の状態が確認できたらすぐに借入れられます。倒産の状態とは、以下です。
倒産の定義 | 概要 | 倒産日 |
---|---|---|
法的整理 | 以下の申し立てがされること ・破産手続きの開始 ・再生手続きの開始 ・更生手続きの開始 ・特別清算の開始 | 申し立てがされた日 |
取引停止処分 | 手形交換所に参加する金融機関により 取引停止処分を受けること | 取引停止処分の日 |
でんさいネットの取引停止処分 | でんさいネットに参加する金融機関により 取引停止処分を受けること | 取引停止処分の日 |
私的整理 | 債務整理の委託を受けた弁護士・認定司法書士によって、 共済契約者に対し支払いを停止する旨の通知がされること | 通知がされた日 |
災害による不渡り | 甚大な災害の発生によって、 手形や小切手等が「災害による不渡り」となること | 手形交換日・呈示日 |
災害によるでんさいの支払い不能 | 甚大な災害の発生によって、 でんさいが「災害による支払い不能」となること | でんさいの支払い期日 |
特定非常災害による支払い不能 | 特定非常災害により代表者が死亡等し、弁護士等によって、 支払いを停止する旨の通知がされること | 通知がされた日 |
倒産の定義は、法的な根拠もしくは災害など、明らかな状態が見受けられる場合に限ります。夜逃げなど、倒産か判断しかねる場合は倒産とは認められないため注意が必要です。
経営セーフティ共済の掛金は、法人の場合は損金に、個人事業主の場合は必要経費に計上できます。そのため、掛金を支払っている期間は、法人税または所得税の高い節税効果が期待できます。たとえば、掛金を10万円に設定すれば、年間120万円の損金算入が可能です。
黒字額が多い年は、掛金を増額して納める法人税や所得税を抑えることができます。なお、損金または必要経費として算入できるのは、事業所得のみです。個人事業主で不動産所得などとあわせて計上する場合は、注意しましょう。
経営セーフティ共済は、12ヶ月以上の掛金を納付すれば解約手当金の受けとりが可能です。解約手当金は、解約の理由により3分類され、手当金の支給率が異なります。
解約金の支給率は以下です。
掛金納付月数 | 任意解約 | みなし解約 | 機構解約 |
1ヶ月~11ヶ月 | 0% | 0% | 0% |
12ヶ月~23ヶ月 | 80% | 85% | 75% |
24ヶ月~29ヶ月 | 85% | 90% | 80% |
30ヶ月~35ヶ月 | 90% | 95% | 85% |
36ヶ月~39ヶ月 | 95% | 100% | 90% |
40ヶ月以上 | 100% | 100% | 95% |
40ヶ月以上の掛金を納めていれば、全額返還されます。資金が必要となった場合に活用できる点はメリットといえるでしょう。
経営セーフティ共済は、加入後に掛金を変更できます。掛金の総額が800万円まで積み立てが可能です。掛金の変更は、申込書を受理した日により対応が異なるものの、希望した月から変更が可能です。
掛金を減額は、事業規模の縮小や経営悪化など、払い込みが困難な場合または、共済金の貸付残高と掛金総額の10倍相当額の合計が8,000万円に達する場合に受理されます。
なお、掛金総額が掛金月額の40倍に達している場合は、掛金の払い止めが可能です。
経営セーフティ共済は、多くのメリットがある一方で、デメリットがあります。考えられるデメリットは、2点です。
それぞれ詳しく解説します。
経営セーフティ共済の加入資格は、起業から継続して1年以上経過した中小企業です。起業した直後は、経営が安定せず、少しでも節税したいと考える時期でしょう。しかし経営セーフティ共済の加入資格を満たしていないため、掛金の払い込みによる節税は期待できません。
さらに、加入から12ヶ月未満の掛金は、掛け捨てになってしまいます。掛金による節税効果はあるものの、毎月一定額の支払いが必要です。加入を希望する場合は、当面12ヶ月の資金繰りを検討してから加入しましょう。
経営セーフティ共済は、12ヶ月以上の掛金を支払うと、解約手当金が発生します。しかし、受けとった解約手当金は、法人の場合は益金として、個人事業主の場合は事業所得として計上しなければなりません。
受けとった事業年度で一気に課税されるため、解約のタイミングに注意が必要です。解約のタイミングは、以下のようなケースをおすすめします。
経営セーフティ共済は、最大で800万円まで積み立てが可能です。加入後40ヶ月以上経過し、かつ最大額まで積み立てていれば、800万円を一度に受けとります。法人の収益状況を見極めたうえで解約を検討しましょう。
経営セーフティ共済へ加入するには、3つの手続きが必要です。
1から3までに2ヶ月以上かかります。加入を検討するのであれば、事前に手続きの流れとスケジュールを確認しておきましょう。
はじめに、加入の申し込みに必要な書類をそろえます。記載が必要な書類と、取り寄せの必要な公的書類があります。記載が必要な書類は、以下のとおりです。
・契約申込書 ・掛金預金口座振替申出書 (加入団体で手続きの場合は、事前に金融機関の確認印をもらう) ・重要事項確認書兼反社会的勢力の排除に関する同意書 (契約申込書の表紙部分に添付) |
取り寄せが必要な公的書類は、個人事業主と法人、事業形態などにより異なります。原則としてそろえるべき書類は以下です。
個人事業主 | ・所得税の確定申告書 (直近の決算書収支内訳書等の添付書類を含む、所轄税務署の受付印付き) ・所得税「納税証明書(その1)」 (確定申告書に記載された予定、確定税額を納付した領収書も可) ・確定申告書の作成に使用した帳簿等 ※白色申告書の場合 |
法人 | ・商業登記簿謄本または登記事項証明書 (法務局発行から3ヶ月以内) ・法人税の確定申告書 (直近の決算書等の添付書類を含む、所轄税務署の受付印付き) ・法人税「納税証明書(その1)」 (確定申告書に記載された予定、確定税額を納付した領収書も可) |
公的書類は、すべて原本による提示書類です。帳簿類など、業務上必要なものは、必要に応じて提出窓口でコピーを取ります。
書類をすべてそろえたら、中小機構へ提出します。提出可能な場所は、中小機構と業務委託契約を結んでいる団体(委託団体)または金融機関の窓口です。原則は、加入している委託団体または融資取引のある金融機関で手続きします。
加入団体または融資取引がない場合の提出先は、以下です。
委託団体 | ・商工会 ・商工会議所 ・中小企業団体中央会 ・中小企業の組合 ・損害保険ジャパン株式会社 |
金融機関 | ・都市銀行 ・信託銀行 ・地方銀行 ・第二地方銀行 ・信用金庫 ・信用組合 ・商工組合中央金庫 |
加入後は、原則として各種手続きすべてを、加入申し込みの提出先(登録取扱機関)でおこないます。事務所からのアクセス等を考慮して提出するのがおすすめです。
書類を提出してから約2ヶ月後「共済契約締結証書」と「加入者必携」が中小機構から郵送されます。「共済契約締結証書」は、各種手続きに必要な証書です。大切に保管しておきましょう。
初回の口座引き落としは、加入申し込み月の2ヶ月後です。たとえば、加入申し込みを1月にした場合「共済契約締結証書」と「加入者必携」は3月に届きます。初回引き落とし日は、3月27日です。1月から3月の3ヶ月分をまとめて引き落とします。
経営セーフティ共済は、希望による解約が可能です。解約の際は注意点があります。
詳しく解説します。
経営セーフティ共済は、掛金を12ヶ月以上支払うと、解約手当金がもらえます。12ヶ月未満の解約は、掛金が戻りません。会社の財務状況や経営計画を見直し、大きな支出がないかを検討してから加入することをおすすめします。
掛金は、損金または経費の対象です。事業を拡大して大きな利益が上昇しそうなときに、経営セーフティ共済へ加入しましょう。掛金を前納しておくと、より高い節税効果が期待できるでしょう。
経営セーフティ共済の解約手当金は、以下いずれかの要件を満たした場合に限り、全額返還されます。
加入から40ヶ月以上の任意解約加入から36ヶ月以上のみなし解約 |
ここで出てくる、経営セーフティ共済の解約理由は以下です。
機構解約の場合は、40ヶ月以上加入している場合においても、全額戻りません。加入期間とあわせて解約理由についても注意が必要です。
経営セーフティ共済のメリット・デメリット、および節税効果について解説しました。経営セーフティ共済への加入に必要な書類をそろえれば、申し込みが可能です。申込書に記載する項目は、難しい項目がないため、本記事を読めば、スムーズに申し込みができるでしょう。
経営セーフティ共済はメリットばかりではありません。おこなっている事業によっては、掛金を払っていても、共済金の借入れができない恐れがあります。あわせて、加入のタイミングを見誤っては、高い節税効果が期待できないかもしれません。
千代田税理士法人では、初回相談が無料です。経営セーフティ共済のベストな加入時期や、正しい節税対策についてアドバイスいたします。共済金だけでなく、資金調達や事業の相談まで対応可能です。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。