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「サラリーマンが会社を設立すると節税できる」とは聞くものの、本当に節税できるのか気になる人は多いでしょう。会社を設立すると法人税率が適用され、所得が一定額を超えると個人事業主の税率よりも低くなるので節税できます。
ただし、会社設立には初期費用や維持費、解散費用もかかりますし、事務手続きも個人事業よりも煩雑になります。誰でも節税できてお得だというわけではありません。
そこで今回は、サラリーマンが副業で会社を設立するタイミングや節税が期待できる理由、注意点などを解説します。本記事を読めば、会社設立のメリット・デメリットなど押さえておくべきポイントを理解できるでしょう。
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目次
副業サラリーマンが節税を目的に会社を設立することは可能です。一定以上の利益が得られるビジネスの場合、個人事業主よりも法人にするほうが税金が少なくなる場合があります。
なぜなら、所得額にかかる税率と売上から差し引ける経費の範囲が異なるからです。法人は初期費用やランニングコストはかかりますが、税率の上限は個人事業主の半分ほどです。
▼個人事業主の所得税の速算表
個人事業主の所得税の速算表 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
▼普通法人の法人税率の表
区分 | 適用関係(開始事業年度) | ||||||
平28.4.1以後 | 平30.4.1以後 | 平31.4.1以後 | 令4.4.1以後 | ||||
普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% | 15% | 15% | 15% |
適用除外事業者 | 19% | 19% | |||||
年800万円超の部分 | 23.40% | 23.20% | 23.20% | 23.20% | |||
上記以外の普通法人 | 23.40% | 23.20% | 23.20% | 23.20% |
個人事業主は所得が330万円を超えると税率は20%ですが、法人は所得が800万円までなら税率は15%となります。さらに、法人のほうが経費の対象範囲が広く、所得額を減らせるのも節税しやすい理由の一つです。
では、所得額によってどれほど税額が変わるのかを具体的に見ていきましょう。ここでは、計算を簡素化するために法人の税率は実効税率を考えます。
実効税率は、法人税に法人住民税と法人事業税を加えた際のおおよその税率です。法人の実効税率は、所得400万円までの部分は21%、400万円〜800万円までの部分は23%として考えます。
個人事業主は、所得税、住民税、個人事業税がかかります。注意すべきなのは、ここでいう所得とは、会社員での収入と合算した金額となることです。それぞれの計算方法は以下の通りです。
所得税 = 所得額 × 税率 − 控除額住民税 = 所得額 × 10%個人事業税 = (所得額−290万円) × 5% |
所得額別に計算した結果、それぞれの場合にかかる税額は以下のようになります。
所得額 | 個人事業主の税額 | 法人の税額 |
300万円 | 507,500円 | 630,000円 |
400万円 | 827,500円 | 840,000円 |
500万円 | 1,177,500円 | 1,070,000円 |
600万円 | 1,527,500円 | 1,300,000円 |
400万円〜500万円の間で個人事業主の税額が法人の税額を上回ります。経費の対象が増えることを考慮すれば、実際はこれより少ない所得額でも法人のほうが支払う税額は小さくなるでしょう。
ただし、法人の場合、設立手続きにかかる初期費用や、日々の税務にコストと労力を要します。会社を設立するか迷われている人は、実際に専門家に相談してみるのがおすすめです。
サラリーマンが会社を設立するメリットは以下の3つです。
それぞれ具体的に解説します。
会社を設立すると、対象となる諸経費の範囲が大きくなります。経費の対象が増え、所得額を小さくできるので支払う税額も少なくなります。
例えば、法人であれば貯蓄性の低い生命保険や福利厚生にかかる費用を経費計上が可能です。ただし、経費にできるものとできないものがあるので、最初は税理士に相談しながら経費項目を検討するのをおすすめします。
設立した会社から役員報酬という形で個人の所得にでき、受け取った所得は給与所得控除の対象となります。サラリーマンの場合、勤め先からの収入と役員報酬を合算した額に給与所得控除が適用されます。
節税に効果的なのが、設立した会社から家族に役員報酬を渡す場合です。例えば、配偶者が会社勤めでない場合、年間55万円までの給与所得には税金がかかりません。最低55万円の給与所得控除が適用されるからです。
役員報酬は経費として扱われるので、支払った分だけ会社の所得は減り、税額も小さくなります。給与所得控除を有効活用すれば、世帯単位で支払う税額を大きく減らせる可能性があります。
会社を設立すれば決算日を自分で決められるので、事務業務が増える確定申告の時期を調節できます。個人事業主の場合は2月16日〜3月15日と定められていますが、法人の場合は決算日〜2ヶ月後となります。
決算日を調整できれば、事業の繁忙期や税務署が混雑する2月〜3月を避けられるのがメリットの一つです。
一方、サラリーマンが会社を設立するにはデメリットも生じます。ここでは、次の4つのデメリットを紹介します。
それぞれ詳しく解説します。
会社を設立するには以下のような諸経費がかかります。
合計すると約25万円となり、節税しようと法人化してもかえって費用がかかる場合もあります。継続的に節税できるほどの利益を得られる見込みがあれば、会社を設立しても節税分で初期費用は回収できるでしょう。
法人化による節税分が初期費用を上回るかが不安な人は、税理士への相談をおすすめします。
参考:
株式会社の設立手続(発起設立)について|法務省
株式会社の設立費用|中小機構
会社を設立するには費用だけでなく、事務手続きに時間がかかるのもデメリットとなります。会社設立の際に必要な事務手続きは以下の通りです。
また、これらに加えて事業年度ごとの決算をおこなう必要があります。法人は会社法にもとづく決算処理が必須なので、高い会計スキルや経験が必要です。
決算業務がどのようなものかを確認し、自分でできるのかを検討したい人は、千代田税理士法人にご相談ください。初回相談が無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。
法人の場合、会社を解散する際にも費用がかかります。解散登記や清算人選任登記の登録免許税や官報公告料、専門家への委託料など10〜20万円ほどの費用が必要です。
会社を設立して3年ほどで廃業にしなければならない場合、その間に初期費用と解散費用を合わせて40万円ほどの費用がかかるでしょう。節税のために会社を設立しようと検討中の人は、事業の継続性も考慮する必要があります。
法人の場合、事業が赤字でも最低7万円の法人住民税の均等割が課せられます。収益がなかったとしても、存続するだけで一定のランニングコストを要するということです。
個人事業主の場合、事業が赤字であれば住民税の非課税世帯として扱われ、住民税はかかりません。事業がうまくいかず、赤字でも税金が課せられるので、一定以上の収益が見込める場合でないと法人化するメリットは薄いでしょう。
次に、会社を設立する際の流れを4ステップに分けて解説します。
会社設立を検討中の人は、今後すべきことを具体的に押さえておきましょう。
まず初めに、会社の基本事項を決めましょう。決めるべきことは以下の通りです。
どれも重要ですが、事業内容や目的などは銀行口座を作成する際にチェックされるので、よく検討して記載します。会社名を決める際は、会社法や不正競争防止法に十分気をつけましょう。
株式会社を作る方法については、下記の記事も合わせてご確認ください。
会社設立の際、事業内容や運営体制などを定めた「定款」を作成する必要があります。聞き慣れない言葉で難しく感じるかもしれませんが、あらかじめ考えておいた会社の基本事項を記載すれば作成できます。雛形もネット上で取得できるので活用しましょう。
定款の作成が完了したら、会社の所在地を管轄する公証役場で定款の認証を受けます。定款の認証には、電子認証の場合は50,000円、電子認証でない場合は90,000円かかります。
定款については、下記の記事も合わせてご確認ください。
資本金は、個人名義の任意の銀行口座に支払います。会社法では資本金が1円でも会社設立は可能となっていますが、最低でも数万円程度は用意したいところです。すぐに用意できない場合は、あとからでも資本金は増額できます。
払い込みが完了したら、残高証明のために通帳のコピーを取っておきましょう。
資本金については、下記の記事も合わせてご確認ください。
最後に、法務局で登記申請をおこないます。登記申請には以下の資料が必要です。資本金の払い込みから2週間以内に申請をおこないます。
サラリーマンが副業で会社を設立する場合、以下のことに注意しましょう。
それぞれ具体的に解説します。
就業規則によって副業が禁止されている場合、ペナルティを課せられるおそれがあるので注意しましょう。個人事業主で事業をおこなうよりも会社を設立するほうが勤務先にバレるリスクは高まります。
もし、副業が禁止されている会社に勤めていて、どうしても会社を設立する場合は気をつけるべきポイントが多数あります。その際は、専門家に相談して対策を練ってから法人設立に踏み切るとよいでしょう。
会社設立によって節税できるかどうかは、事業による利益額や本業収入の大きさによって異なります。個人事業主のほうが節税効果が高くなるケースも考えられるでしょう。
先述したように、会社設立には初期費用や解散費用、維持費が伴います。継続的に一定以上の利益を得られなければ会社を設立しても節税にはなりません。
事業の収益性や継続性、個人の所得額などを総合的に判断して会社を設立するかどうかを慎重に検討すべきです。
サラリーマンが会社を設立する際、勤務先にバレるのを防ぐには以下の2つの方法があります。
会社設立を勤務先に秘密にしておきたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
役員報酬を受け取らないことで、勤務先に副業がバレるリスクを下げられます。勤務先に副業がバレる1つの原因として、住民税の課税金額が変わることが挙げられるからです。
会社が住民税を天引きする「特別徴収」のままにしておくと、役員報酬分も合わせた住民税額が勤務先に知らされます。会社が支給した給与から計算される住民税額との差が生じるため、副業が勤務先にバレてしまうのです。
さらに、役員報酬を受け取れば、社会保険への加入が義務となります。この場合、2ヵ所から収入を得ていることとなり、「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出しなければいけません。
届出を受けた年金事務所は報酬額に応じた社会保険料の徴収金額を決定し、各事業所に通知します。このことにより、勤務先に副業をしていることが知らされます。
会社設立がバレるのを防ぐなら、一緒に働く配偶者や親族などに代わりに代表取締役に就任してもらい、自分自身が役員報酬を受け取らないようにしましょう。
会社の登記情報は一般公開されるので、取締役が自分の名前であれば勤務先にバレてしまうおそれがあります。配偶者など近い関係の人の名前を取締役として登記すれば、バレるリスクは低減するでしょう。
もし副業を怪しまれたとしても、配偶者の事業を手伝っていることにしておけばいいのです。副業に厳しい公務員でも、家族の事業を手伝っているとして副業が認められる事例もあります。
会社に副業がバレない方法は下記の記事でも解説しております。合わせてご確認ください。
所得額が400万円〜500万円あたりになると、個人事業主での納税額が法人での納税額を上回ります。さらに、法人のほうが必要経費の対象範囲が広がるので、より効果的に節税ができるでしょう。
ただし、会社設立には初期費用や維持費、事務手続きが生じるので、コストや労力を踏まえて慎重に検討する必要があります。事業の収益性や継続性、会社員での所得額など節税対策の検討材料は多いため、迷ったら専門家に相談してみましょう。
千代田税理士法人では、サラリーマンが副業で会社を設立する際の節税についてアドバイスいたします。初回相談が無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。
ペーパーカンパニーとは、名前だけで実体のない会社のことです。悪質だと判断された場合、脱税として摘発される事例もあります。
確かに、所得を分散させられると税率を下げられる可能性があるので節税できるかもしれませんが、摘発されれば元も子もありません。法人化を検討するのであれば、ペーパーカンパニーではなく実体の伴う事業にするべきです。
また、租税回避のために法人税の少ない国にペーパーカンパニーを設立する事例もあります。その場合、「タックスヘイブン対策税制」が適用され、日本の税制にもとづいた所得税や法人税が課せられます。
所得の分散や租税回避で税率を下げようとペーパーカンパニーを作るのはリスクのある行為なので、節税対策の手段として選ばないようにしましょう。
サラリーマンが会社を設立した場合、基本的には設立した会社でも社会保険に加入しなければなりません。勤め先でも社会保険料は支払っているため、二重の支払いとなってしまいます。
ただし、社会保険料を考慮しても節税額が上回っていれば、会社設立のメリットは十分に得られます。複雑な計算が必要なので、税理士に相談しながら節税額と必要なコストを試算してみましょう。