竹橋駅5分/神保町駅10分
法人税が免除される方法があるなら、早めに手を打っておきたいですよね。結論、赤字になれば法人税を支払わずに済みます。
とはいえ、むやみに収支を調整して赤字にするのはおすすめできません。企業の決算は複雑で、少し間違えれば税務署から罰則を受けたり、金融機関からの信用を落としてしまったりするからです。
本記事では、法人税の特徴をお伝えし、赤字決算で節税対策をおこなう際の注意点やメリット・デメリットについて解説します。本記事を読めば、法人税が免除される仕組みが理解でき、節税対策をするうえで必要なことを把握していただけるでしょう。
会社設立案内BOOKを無料提供しております。ダウンロードはこちらから!
目次
法人税とは、法人が事業を通して得た所得に対してかかる税金です。個人の所得税と同様、確定申告をおこなった後に支払います。法人税の支払い期限は、事業年度が終了した翌日から2ヶ月以内です。この期間内に、確定申告と法人税の納税を済ませる必要があります。
法人にもさまざまな種類に分かれており、中には法人税を支払う必要がないものもあります。法人の種類と法人税の支払い義務について、以下の表に記載しました。
法人の区分 | 課税所得の範囲 | 具体的な法人の例 |
公共法人 | 納税義務なし | 地方公共団体など |
公益法人等 | 収益事業で生じた所得に対して課税 | NPO法人、宗教法人など |
人格のない社団等 | PTA、同業者団体など | |
協同組合等 | すべての所得に対して課税 | 農業協同組合、信用金庫など |
普通法人 | 株式会社、合同会社など |
公共法人には法人税は課せられず、普通法人や協同組合はすべての所得が法人税の対象です。また、NPO法人や宗教法人などの公益法人や、人格のない社団等は収益事業の所得に限って法人税が課せられます。収益事業とは、製造業や物品販売業、旅館業など、34種類の事業が該当します。
法人税率は、法人の種類や資本金・所得額によって以下のように定められています。
区分 | 法人税率 | |||
普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者(※) | 19% | |||
年800万円超の部分 | 23.20% | |||
上記以外の普通法人 | 23.20% | |||
協同組合等 | 年800万円以下の部分 | 15% | ||
年800万円超の部分 | 19% | |||
公益法人等 | 公益社団法人・公益財団法人・非営利型法人など | 収益事業から生じた所得のうち、年800万円以下の部分 | 15% | |
収益事業から生じた所得のうち、年800万円超の部分 | 23.20% | |||
人格のない社団等 | 収益事業から生じた所得のうち、年800万円以下の部分 | 15% | ||
収益事業から生じた所得のうち、年800万円超の部分 | 23.20% |
※年平均所得金額が前3事業年度で15億円を超える法人
例えば、年間所得額が1,000万円の株式会社の場合、800万円に15%をかけ、残りの200万円に23.20%をかけて税額を算出します。
ただし、法人にかかる税金は法人税だけではありません。所得に対してかかる税金を計算するためには、法人住民税や事業税などを加味した「実効税率」を適用する必要があります。
税務会計が赤字の場合、法人税が免除されます。法人税は、課税所得に税率をかけて算出されるためです。
課税所得は、益金から損金を差し引いて算出するので、売上が大きくても法人税が免除される場合があります。例えば、益金が5,000万円でも、損金が6,000万円かかっていれば課税所得はマイナスになる場合があります。
法人税が免除されると思っても、計算方法を間違えて法人税が課せられたり、予期せぬほかの税金が課せられたりすることがあります。これらのミスを犯さないよう、以下の2点について押さえておきましょう。
法人税額を算出するには、企業会計ではなく税務会計を用いなければいけません。企業会計は「収益−費用」、税務会計は「益金−損金」で求められます。収益と益金、費用と損金は必ずしも一致しないので、企業会計と税務会計とでは赤字の概念が異なります。
企業会計上は費用として計上されるものの、税務会計上で損金に含まれない例として以下のものがあります。
項目 | 内容 |
役員報酬 | 税務上の「役員」に該当する者に対して支払われる報酬 |
交際費 | 事業に関係する得意先や仕入れ先への接待費 |
寄付金 | 組織や団体に譲渡した金銭や資産 |
減価償却の超過額 | 計上した減価償却費のうち、償却限度額を超過する部分 |
これらは損金に含まれないので、課税所得を減額できません。税務会計をおこなうには、法人税法の規則に基づいた会計処理が必要なので、税理士にサポートしてもらうのをおすすめします。
法人税が免除されたとしても、税金を支払わなくて済むわけではありません。赤字になっても、以下の税金は免除されないため、注意が必要です。
税金 | 内容 |
法人住民税 | 法人が事業所を置く地方自治体に納める地方税 |
消費税 | 商品の販売やサービスの提供に対してかかる税金 |
源泉所得税 | 従業員の給与から天引きした所得税 |
住民税 | 従業員の住民税 |
印紙税 | 契約書や領収書などの文書に課税される税金 |
登録免許税 | 会社や不動産などについて登記や登録する際の税金 |
固定資産税 | 土地や家屋、減価償却資産などの固定資産にかかる税金 |
自動車税 | 自動車にかかる税金 |
特に、法人住民税と消費税は見落としがちなので注意しましょう。法人住民税は、小規模でも最低7万円の支払いがありますし、消費税は特定の条件を満たさなければ免税されません。これらの税金を踏まえたうえで、支出額を調整する必要があります。
赤字決算は節税面でさまざまなメリットがあるため、必ずしも悪いことではありません。赤字決算のタイミングや金額によっては法人税を抑えられることがあります。ここでは、どのような場合で法人税が少なくなるのかについて具体的に解説します。
赤字決算の場合、課税所得額が0なので法人税がかかりません。法人税は税率が高いため、税額も高額になりがちです。したがって、赤字決算によって法人税が免除されると、法人の税負担は大幅に軽減されるでしょう。
青色申告をおこなっている中小企業であれば、赤字決算の場合、前年に支払った法人税を取り戻せます。この仕組みを「欠損金の繰戻し還付」といい、還付額の計算式は以下の通りです。
繰戻し還付額 = 前期法人税額 ×(当期欠損金額 ÷ 前期所得金額) |
例えば、前期の所得金額が100万円で法人税を15万円支払っていたとします。当期の欠損金額が50万円であった場合、繰戻し還付額は次のように算出できます。
繰戻し還付額 :15万円 ×(50万円 ÷ 100万円) = 7.5万円 |
前期の課税所得の100万円を当期の欠損金額の50万円で相殺し、その分の法人税額が返済される仕組みです。ただし、欠損金の繰戻し還付は、資本金が1億円以下の企業にしか適用されないので注意しましょう。
赤字決算となった場合、前年に納めた法人税だけでなく、将来納める法人税も減らせます。この仕組みを「欠損金の繰越控除」といい、青色申告をおこなった年の欠損金を最大10年間分の黒字と相殺できるというものです。
例えば、2024年度の欠損金額が1,000万円となった場合、2025〜2034年度までの黒字額を欠損金額の分だけ相殺できます。翌年以降の黒字額の合計が1,000万円に到達するまで、10年以内であれば適用可能です。
ただし、資本金が1億円を超える法人の場合、控除できる金額に制限がかかります。控除限度額は、繰越控除前の所得額に対して50〜80%を乗じた金額となります。
開業当初に多額の初期投資で赤字となった場合、欠損金の繰越控除を活用すれば、翌年以降の法人税額を抑えられるでしょう。
参考:No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|国税庁
赤字決算となった場合、節税効果が期待できる反面、経営していくうえで不都合なリスクも生じます。法人税を抑えられたとしても、企業経営に支障をきたしてしまい、かえって損をする可能性もあります。
そうならないために、以下に紹介する赤字決算のデメリットをきちんと把握したうえで、節税対策を検討しましょう。
もし、資金調達を考えているなら、赤字決算によって融資を受けづらくなる可能性があります。金融機関に経営不振や経営の不安定さによって赤字が生じていると判断されることもあるからです。
ただし、金融庁の金融検査マニュアルによると、以下の場合は正常と考えて問題ないとしています。
赤字決算による節税を検討する際は、金融機関から問題視されない範囲でおこなうべきだといえるでしょう。
赤字決算を長期間にわたって続けてしまうと、膨れあがった債務を返済できなくなり、倒産する可能性があります。
一時的な赤字を節税に活用するのはよいですが、経営破綻してしまっては意味がありません。長期的な企業経営を考えると、赤字決算を続けることのリスクは大きいといえるでしょう。
したがって、経営状況に応じて節税と利益のバランスを考えることが大切です。適切な節税をおこないつつ事業を成長させるためには、税理士などの専門家に資金繰りをサポートしてもらうのがおすすめです。
架空の経費を計上し、脱税として摘発される事例があります。赤字決算は節税になりますが「経費を水増しして脱税しているのではないか?」と税務署に怪しまれるかもしれません。
税務調査が入ると過去数年分の記録を遡って調べられ、不備があれば、追徴課税が課せられます。赤字決算で税務署に怪しまれないか不安な方は、税理士に的確な税務処理をしてもらいましょう。
税務会計で赤字になれば、その年度の法人税が免除されるうえ、前年度や10年後までの黒字を相殺できるので節税効果が高いです。そのため、法人税の負担が大きいと感じている方にとっては、うまく活用しない手はないでしょう。
しかし、脱税目的の赤字決算ではないかと税務署に怪しまれるリスクもあります。脱税だとみなされれば追徴課税が課せられるので、税負担がかえって大きくなるでしょう。
そうならないためには、節税対策の際に税理士のサポートが必要になります。気軽に相談できる税理士をお探しであれば、千代田税理士法人へご相談ください。初回限定で無料相談を実施しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
赤字の場合でも法人住民税の均等割を支払う必要があります。均等割の税額は資本金額や従業者数に応じて定められいますが、最低7万円の税金を支払わなければなりません。
法人の消費税免除がなくなるのは、以下のケースです。
・課税期間の基準期間(※1)における課税売上高が1,000万円以上となった事業者
・特定期間(※2)における課税売上高が1,000万円を超えた場合
・適格請求書(インボイス)発行事業者
※1 基準期間とは、その事業年度の前々事業年度をいいます。
※2 特定期間とは、前事業年度が開始してから6ヶ月の期間をいいます。
よって、基準期間または特定期間に課税売上高が1,000万円を超えるか、インボイス制度に登録すれば消費税が課せられます。