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創業融資の準備で最初に手が止まるのが、書類の用意です。
日本政策金融公庫の必要書類は、全員に共通するものと、個人か法人かで変わるもの、業種によって増えるものに分かれます。この3つを混ぜて考えると、抜けが出ます。
この記事では、公庫が公表している必要書類を区分ごとに整理します。あわせて創業計画書の書き方の勘所と、電子化して提出する際の実務も解説します。
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必要書類を一覧で暗記する必要はありません。どの区分に自分が当てはまるかを先に決めれば、用意する書類は自動的に絞られます。
まず全体の構造から確認します。
1層目が共通書類です。借入申込書、本人確認書類、送金先の預金通帳など、申し込む人全員が提出します。
2層目が区分別の書類です。個人事業主か法人か、公庫の利用がはじめてか経験があるかで内容が変わります。
3層目が事業別の書類です。許認可が必要な業種や、生活衛生関係営業に該当する場合に追加されます。
自分がどの層にいくつ該当するかを最初に確定してください。作業量の見通しが立ちます。
公庫がインターネット申込向けに公表している一覧を、個人と法人で並べると次のようになります。
| 書類 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 創業計画書(事業開始前) | 必要 | 必要 |
| 企業概要書(事業開始後) | 必要 | 必要 |
| 確定申告書(一式)直近2期分 | 必要 | 必要(決算書一式) |
| 試算表 | 原則不要 | 決算後6か月以上経過時など |
| 法人の履歴事項全部証明書 | 不要 | 必要(最近6か月以内) |
| 本人確認書類 | 本人分 | 代表者分 |
| 送金先の預金通帳 | 必要 | 必要 |
| 見積書 | 設備資金の場合 | 設備資金の場合 |
法人で増えるのは履歴事項全部証明書と試算表です。個人事業主より1〜2点多い程度で、負担の差は大きくありません。
飲食店や理美容室など、営業に許認可がいる業種では許認可証の提出が求められます。
生活衛生関係営業に該当する場合、さらに書類が増えます。公庫の案内では次の2点が挙げられています。
| 状況 | 追加書類 |
|---|---|
| 生活衛生関係営業かつ一般貸付を希望し、500万円を超える申込 | 都道府県知事の「推薦書」 |
| 生活衛生関係営業で振興事業貸付を希望 | 振興事業に係る資金証明書 |
推薦書は生活衛生同業組合を通じて取得します。発行までに日数がかかるため、着手は早いほど安全です。
区分にかかわらず必要になる書類から押さえます。ここは調べる時間より、集める時間のほうが長くかかります。
借入申込書は公庫の様式です。国民生活事業用のものを、公庫サイトからダウンロードして使います。
表面と裏面を両面印刷するか、2枚に出力して提出します。押印は不要です。インターネット申込を使う場合は、申込フォームへの入力に代わるため、書式の提出自体が不要になります。
記入内容は資金の使いみち、希望金額、返済期間などです。金額は創業計画書の資金計画と一致させてください。
創業前と創業後で、提出する計画書類が変わります。
事業を始める予定の段階なら創業計画書です。すでに事業を開始している場合は企業概要書を用意します。
公庫は創業計画書を「新たに事業を始める方に事業計画等をご記入いただくもの」、企業概要書を「はじめてお取引いただく方に、取扱商品・サービス等の企業内容について、簡単にご記入いただくもの」と説明しています。
どちらを出すか迷う場合は、開業届の提出日を基準に判断してください。
本人確認書類は3種類のいずれかです。運転免許証は両面、マイナンバーカードは表面のみ、パスポートも認められています。
法人の場合は代表者個人の書類を提出します。
送金先の預金通帳は、表紙と見開き1ページ目を用意します。融資金の振込先になる口座です。
なお公庫の利用経験がある方は、返済口座が変わらなければ通帳の提出は不要です。
提出書類のうち、内容で差がつくのは創業計画書です。他の書類は事実の証明ですが、計画書だけは書き手の考えが出ます。
創業計画書の様式は、おおむね次の項目で構成されています。
創業の動機、経営者の略歴等、取扱商品・サービス、取引先・取引関係等、従業員、お借入の状況、必要な資金と調達方法、事業の見通しの8項目です。
各欄の記入スペースは限られています。公庫は記載内容が枠に収まらない場合、別紙の作成を認めています。
書ききれない項目は無理に圧縮せず、別紙で補ってください。
公庫は創業計画書のセルフチェックで、資金計画の確認ポイントを次のように示しています。
「見積金額が適切か、相場を調べたり、相見積もりを取得するなどして、検証していますか?」
「事業開始後の運転資金(半年程度の赤字補填資金など)について検討していますか?」
「自己資金が少なく、借入依存の資金調達計画になっていませんか?」
3つとも、金額の根拠を問う内容です。数字を置いた理由を説明できる状態にしてください。
創業計画書の「事業の見通し」欄は、創業当初と軌道に乗った後の2時点しか書けません。
季節変動が大きい事業や、立ち上がりに時間がかかる事業では、この2時点だけでは説明が足りません。
そうした場合に使うのが月別収支計画書です。公庫は「創業計画書において、月別の詳細な収支計画を策定する場合に、ご記入いただくもの」と位置づけています。
据置期間を長めに希望する場合も、月別で示すと意図が伝わります。
設備資金を申し込む場合、見積書の提出が必要です。運転資金のみの申込では不要です。
設備資金は、何にいくら使うかが明確な資金です。見積書がなければ、申込金額の妥当性を判断できません。
内装工事、厨房機器、車両、システム導入など、対象ごとに見積書を用意します。
見積書の合計額と、創業計画書の「必要な資金」欄の設備資金額をそろえてください。ここがずれていると、面談で必ず確認されます。
公庫は相場の検証や相見積もりの取得を、資金計画のチェックポイントに挙げています。
1社の見積書だけでは、その金額が適正かどうかを示せません。同条件で2〜3社から取ると、比較の材料になります。
金額が高い業者を選ぶ場合も、選定理由を説明できれば問題ありません。安さだけが評価されるわけではないためです。
設備の内容が複雑な場合、公庫の設備投資計画書という様式も用意されています。
投資の内容、金額、効果を整理して記入する書式です。設備の点数が多い場合や、投資額が大きい場合に使います。
必須ではありません。見積書だけで説明が足りると判断できるなら、無理に作成する必要はありません。
法人での申込では、会社の存在と実態を示す書類が加わります。
法人の履歴事項全部証明書は、最近6か月以内に取得したものが必要です。
法務局の窓口、オンライン請求、郵送のいずれでも取得できます。オンライン請求なら手数料も窓口より安く済みます。
設立直後に申し込む場合、登記完了前は証明書が発行されません。設立登記の完了日を起点に、融資の申込時期を逆算してください。
公庫の利用がはじめての法人は、直近2期分の確定申告書と決算書一式を提出します。勘定科目明細書も含みます。
設立したばかりで決算を迎えていない場合、この書類は存在しません。その場合は創業計画書が判断材料の中心になります。
決算後6か月以上が経過している場合や、決算が未了の場合は試算表の提出が必要です。会計事務所に依頼している場合、作成までの日数を確認しておいてください。
法人での申込でも、本人確認書類は代表者個人のものを提出します。
創業期の法人は、代表者個人の信用状況と切り離して評価されません。個人の借入状況も創業計画書の「お借入の状況」欄に記入します。
住宅ローンやカードローン、自動車ローンも記入対象です。記入漏れは信用情報の照会で判明します。正確に書いてください。
書類がそろっても、提出の仕方でつまずく場合があります。インターネット申込を使う場合はとくに注意が必要です。
公庫は電子化したファイルの名前を、書類の中身がわかるように設定するよう案内しています。
参考として示されているファイル名の例は次のとおりです。
| ファイル名の例 | 内容 |
|---|---|
| 令和〇年確定申告書一式 | 【個人】「所得税青色申告決算書」または「収支内訳書」を含む確定申告書一式 |
| 令和〇年〇月期確定申告書・決算書 | 【法人】確定申告書一式、決算書(勘定科目明細書を含む) |
| 営業許可証 | 営業許可証 |
| 運転免許証 | 運転免許証 |
種類の異なる書類を1つの圧縮ファイルにまとめる方法は、公庫が控えるよう案内しています。本人確認書類と見積書を同じZIPに入れるのは避けてください。
確定申告書にマイナンバーが記載されている場合、黒塗りして読み取れないようにしてから提出します。
住民票を提出する場面でも同じ扱いです。個人番号は融資審査に使われません。
電子申告の場合は、受信通知を添付したものを提出します。書面申告で令和6年12月以前に申告したものは、税務署の収受印があるものが必要です。
インターネット申込では、申込完了後に追加で書類をアップロードする方法がありません。
アップロード漏れに気づいた場合、支店への連絡が必要になります。手戻りを避けるため、送信前に一覧と突き合わせてください。
なお入力内容に不備がある場合や、必要書類が不足している場合は受付できません。書類がすべてそろってから申込に進むのが安全です。
書類を準備する前に、申し込む制度の条件も確認しておきます。
創業時に多く使われるのが、この制度です。主な条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間(設備資金) | 20年以内(うち据置期間5年以内) |
| 返済期間(運転資金) | 10年以内(うち据置期間5年以内) |
| 担保・保証人 | 希望を聞いたうえで相談 |
対象要件には「適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」という条件が付きます。創業計画書の提出が求められるのはこのためです。
インターネット申込、郵送、支店窓口の3通りがあります。
インターネット申込では、書類を電子ファイルのまま提出できます。印刷と郵送の手間がかかりません。
郵送の場合は、借入申込書と必要書類を支店へ送ります。窓口での相談を希望する場合は、事業資金相談ダイヤルで最寄り支店を確認してください。
書類の中には、自分だけでは用意できないものが含まれます。
履歴事項全部証明書は法務局、許認可証は所管の行政庁、推薦書は生活衛生同業組合を経由します。相見積もりも、依頼から受領まで1〜2週間かかることがあります。
融資金が必要な日から逆算し、書類の取得期間を先に確保してください。開業日直前に慌てて集めると、条件の詰めが甘くなります。
創業融資の必要書類は、共通・区分別・事業別の3層で整理すると迷いません。
全員が用意するのは借入申込書、創業計画書または企業概要書、本人確認書類、送金先の預金通帳です。設備資金なら見積書が加わります。
法人はさらに、最近6か月以内の履歴事項全部証明書と、決算書または試算表が必要になります。許認可が要る業種では許認可証も提出します。
内容で差がつくのは創業計画書です。公庫は資金計画について、見積金額の検証、開業後の運転資金の検討、自己資金と借入のバランスを確認ポイントに挙げています。
インターネット申込では、ファイル名の付け方とマイナンバーの黒塗りに注意してください。申込完了後の書類追加はできません。
書類の取得には日数がかかります。融資金が必要な日から逆算し、余裕を持って着手してください。